仏事の相談で西光寺を訪れたかずみさん。お布施の話になり、思わず本音がこぼれました。
住職さん、お布施のことなんですけど、ちょっと聞いてもいいですか?
はい、何でしょう?
お布施の金額を聞くと、よく「お気持ちで結構です」って言われるじゃないですか。あれ、一番困るんですよ(笑)。
ああ、そうですか(笑)。
だって、いくら包めばいいか分からなくて聞いてるのに、余計に分からなくなるじゃないですか。
なるほど。じゃあ、金額を言った方がいいですか?
そりゃそうですよ、少なすぎたら失礼だし。まあ、多すぎても困るけど…。
でもそれって、「自分で決めなくて済む」っていうのが本音じゃないですか?(笑)。
ん?…まあ、そう言われれば(苦笑)。
お布施って、実は仏道の修行の一つなんですよ。
えっ? お金を包むのが修行なんですか?
お金にかかわらず、自分のものを自分の意思で差し出す。それが布施という「行」なんです。
でも住職さん、それって受け取る側だから言えるんじゃないですか?
いやいや、私が受け取るんだったら、金額をハッキリ言いますよ(笑)。
えっ? じゃあ、誰が受け取るんですか?
仏さまですよ。お布施って言っても、仏さまの「お供え」と同じですから。
「お供え」ですか?
ちょっと聞きますけど、仏さまにお菓子などをお供えするときに「何をお供えしたらいいですか?」って聞きます?
…まあ、そうですね。自分で考えて持ってきますね。
でしょ?(笑)お布施もそれと同じです。
でも、お菓子とお金じゃやっぱり違いますよ(笑)。お金だと金額がはっきり分かるし…。
お金になると、途端にいろんなことを考えちゃいますよね(笑)。
そりゃそうです。だから、最初から決めてもらった方が楽なんです(笑)。
分かりますよ(笑)。お布施って、包む前からいろんなものが出てきますからね。
えっ、何がですか?
「自分の気持ち」ですよ。お金を差し出そうとすると、普段は気づかない自分の心が見えてきますから。
…そう言われると、なんだか余計に包みにくいです(笑)。
あはは。目安はお伝えしますよ。でも、それはあくまでかずみさんが「自分で決めるための参考」ですからね。
…結局、最後は自分で決めるんですね(笑)。
そこだけは、代わってあげられませんからね(笑)。
お布施は、仏道の実践である「布施行」の一つです。
自分のものを、自分の意思で差し出す。その行いを通して、普段は気づかない自分自身の姿が見えてくることがあります。
少なすぎればどう思われるだろう。かといって、多く差し出すのも惜しい。そんな思いが次々と湧いてくるのも、私たちの偽らざる姿なのでしょう。
布施行とは、単に何かを差し出すだけでなく、そこに現れる自分の執着を知らされるご縁でもあります。
お布施の金額に決まった正解はありません。目安をお伝えすることはできますが、最後に決めるのは、ご自身です。
その迷いやためらいも含めて、自分の心と向き合うところに、布施という行の大切な意味があるのではないでしょうか。
